第十二章 目的

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勇者の話によると、どうやら中佐は今日の占いの運勢が最悪だったらしい。 「その酷い出来事の中に、モブ、お前がしたことも入ってんだぞぉ?」 「あ、俺!?」 俺、何かやったっけ? 「昼飯をバナナまみれにしやがってぇ……」 なぜ俺を睨む!! 「どこが酷いことなんだよ」 「こんなにバナナいらねぇよ!! イジメかぁっ!?」 イジメじゃねぇし!! 「中佐が『変わったものが食いたい』って言ったからちょっと変えてやったんだよ。どこが不満なんだよ?」 「何が『ちょっと変えた』だ!! 何もかもがバナナに変わってるじゃねぇかぁ!! 昼飯で食べたい思うヤツなんて見てみてぇよぉ!!」 「俺は喜んで食うわ!! どこからどう見てもごちそうだろ!!」 「それはねぇなぁ!! 嫌がらせにしか見えねぇよ。勇者が作った昼飯の方がまだマシだぁ」 勇者が作った方がマシ……!? 調理したものを自然界に存在しない色の液体に変えてしまうという勇者にバナナが劣るというのか!? かっちーん。 それはオカシイ。 「中佐、ちょっとオモテ出ようか」 「お? なんだぁ? モブ、ヤル気かぁ?」 「ちょっ、二人ともやめようよ!! たかが昼飯で喧嘩なんて……」 “たかが”? 昼飯じゃねぇ、バナナの尊厳を守る戦いだ。 勇者を無視し、中庭に出る。 僧侶がすごく楽しそうな目で見てきたのは気のせいか? 「ほらぁ、来いよ、モブ」 中佐が挑発してくる。 「そっちこそ」 向かい合ってみたものの、俺は守備特化の人なので、攻撃には長けてないし自信がない。だからカウンターを狙う必要があった。 「ちょっと待て!!」 俺の返しに乗ろうとして動き出そうとしていた中佐を武闘家が制した。 「なんだぁ? これからイイトコなんだぜぇ?」 「中佐に重なるその影は何だ?」 「はぁ?」 中佐の足元、というか、中佐が影に差している。 俺と中佐は不思議に思って上を見上げる。 「なんか、メッチャ白く光ってるのが見えるけど?」 「モブにも見えるのかぁ? 俺にも見えるぞぉ。何だ、アレは?」 「なんか、段々大きくなってない? てか近付いてきてない!?」 「つーか、アレ、隕石じゃねぇかぁ!!」 中佐、どんだけ厄日なんだよ!! 口は災いの元って言ってたんだっけ? ……そういや、さっき中佐が『次は隕石かぁ!?』って言ってたな。 隕石……ヤバイね。 俺は一目散に中佐から離れることにしたわ。 「逃げんな!! ほらぁ、来いよぉ、モブ」 ごめん、無理。
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