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「あら~? 起きたかしら~?」
「え……?」
ふと、声のする方向に首を捻ると、そこには青い僧侶服を着た長い黒髪の女性が、その黒い瞳を俺に向け座っていた。
しかし、その光景は俺を驚かすには十分で、俺の中の僧侶という神聖な職のイメージを揺るがすような強い衝撃を備えていた。
何が衝撃的だったのか。
それは、僧侶服の女性が俺を見下すように座っているということだった。
こんな暗く狭い路地裏で。意識の無い怖い人B、怖い人Cを重ねてできた簡易イス(?)の上に!!
俺の常識が正しければ、確か僧侶とは慈悲深く、神聖な感じの職業だった気がする。
だが、倒れている俺の横で怖い人たちに座り、脚を組んで面白そうに俺を見下ろしてるようなこの女性は、果たして俺の知ってる僧侶さんなのであろうか。
……はっ!! もしかして、この人は怖い人に襲われていた俺を助け、俺が起きるまで見守ってくれていたのかもしれない!!
……怖い人に座ってるけど。
きっとそうにちがいない!!
……怖い人に座ってるけど。
一応俺の置かれた状況を知っておきたいしな。この僧侶らしき女性に訊いてみよう。
「えっと、あの、俺はどうしてここに……?」
「あ~、えーとねぇ、あなたはねぇ、ここの男どもに襲われていたのよ~」
「もしかして、あなたが助けてくれたんですか?」
「まぁ、そうなるわね~」
ヤバイ、泣きそう。なんていい僧侶さんなんだ!!
……怖い人に座ってるけど。
「今、回復魔法かけてあげるからちょっと待ってねぇ?」
ヤバイ、マジ泣きそう。何ていい僧侶さんなんだ!! 怖い人から助けてくれた上に回復までしてくれるなんて!!
……怖い人に座ってるけど!!
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