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ラスは特に気分を害した様子もなく、歩き続けた。
淡々としている彼女の姿に俺は目を奪われる。
「自分の上司の傍にマフィアの人間が居れば注意して接するのは妥当な判断だ。---特にナイトメアは一応、この国の領主だから尚更だ。」
「確かにそれもあるが…。」
「<余所者>が珍しいか?」
「否定はしない。」
「---同業者は信用出来ないからか?」
「えっ?」
足を止めたラスが真っすぐな瞳で俺を射ぬく。
見透かされているようだ。
「武器を隠し持つのはお前だけではない。」
「---君も暗殺者か?」
「ああ。---<死神>と呼ばれる位は殺した。---今も殺し続けている。」
彼女の表情から本心は伺えないが、俺には彼女が悔いているように感じられた。
それはきっと俺には理解出来ない感情なのだろう。
「---俺は生きる為にこれからも殺し続ける。この身が朽ち果てるまで。」
「ラス…君は悔いているのか?」
「---俺は暗殺者としては、失格なのだろう。」
ラスはまた歩き出した。
俺はその背を追い掛けるしか出来なかった。
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