Prologue

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******* 「交渉は決裂ね。 今日はこれにて失礼」 街の中心部にそびえる200階建ての最高裁判所 その一室に集まった群衆が、弱冠18歳である少女の突飛な行動に度肝を抜かれた。 黒皮のコートに不釣り合いな桜色の長い髪をかき上げ 少女はおもむろに席を立つ。 ガタン、と真っ赤な椅子が音を立てたのを合図に 後ろに控えていた少年が慌ててドアを開けた。 「ケイマ!雪洞・F・ケイマ!! 逃げるおつもりですか!」 どよめきと共に金切り声があがる。 重く大きなドアを支えるフットマンの少年が 怯えたように主人の少女、改め雪洞(ぼんぼり)の顔を見た。 原告席に居た中年男性が ひび割れた声で怒鳴った。 「あなたの作った機械、篝(かがり)のせいで うちの息子がおかしくなってしまったんだぞ!」 雪洞は少しだけ首を動かして横を見遣る。 男の指差す先では、ほろほろと涙を流す女性に肩を抱かれた少年が 呆けたように口をぽかんと開けて天井を見つめていた。 そうだそうだ! さっさと慰謝料を支払え! 観客、ではなく傍聴者からも 痛烈なヤジが飛ぶ。 古代ギリシャの円形闘技場のような裁判室を、 雪洞はぐるりと見渡した。 そしてくすりと笑って後ろを振り返ると 宣戦布告する武将のごとく高らかに腕をあげて言い放った。 「なんとでも言ったら良いわ。あんたたちの魂胆は分かってるのよ」 ――おいおいおいおい! 少年が顔を青ざめる。 幸いその声は更に高まる群衆の声にかき消された。image=437300890.jpg
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