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日傘をさしながら歩く人に注意しながら橋を渡り切ろうとしたそのとき、先ほど見かけた若い舞妓とまたすれ違った。
気持ち悪いくらい自然に。
しかも、自転車ですれ違う一瞬ではあったが、不思議なことに着物の色に初々しい顔立ち、なにより僕に一瞥をくれる仕草までもが一切の狂いなく同じで、同時にそれを確認できた。
「えっ?」
よく、世の中には似ている人が三人はいるといった事が言われているが、それとはわけが違う。
まるで先ほど一瞬を切り取ってもう一度持ってきたような感覚だった。
あまりの不思議さに頭が混乱しそうになりながらも、僕は人を轢かないようにしながら自転車を漕ぎ続け、温風を浴びながら街をひた走る。
今日は奇妙な一日だ、また何か起きるのではないかと思いつつ、観光客で賑わう軋音森(きしねもり)神社を横目に大通りを走りぬけた。
狐を祀っている軋音森神社の敷地は広く、青々と茂った木々が鬱蒼としており、文字通り森のようになっているその場所は旧都の観光名所の一つになっている。
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