第1話 旧都の暑い夏

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そして面白いことに、軋音森神社には化け狐が住み着き、辺りの人々を騙すという言い伝えもあるのだ。 その化け狐というのも一匹ではなく、まるで一族のように何匹もいるというのだから、なおさら騙される確率が高くなり、その人数も増えていく。 そんなこともあってか軋音森神社の付近では交通事故が多発していたり、怪奇現象の報告が後を絶たない。 兎にも角にも、そんな場所もいろんな意味で有名になり、こうして死ぬほど暑い昼間からでさえ観光客で賑わっているのであった。 そこでふと、僕は考える。 もしかしてさっきの舞妓さんは化け狐だったのかしら。そうだとしたらとても珍しい体験をしたなぁ 基本的にオカルトな話は信じる人間だったのでそのような考えに至ることはごく普通のことで、むしろそのほうが、スパイシーな毎日を送れるではないかと思うくらいだった。 なので、軋音森神社には化け狐が住んでいて欲しいし、欲を言うなれば丑三つ時に呪いをかけている女も何人かいてくれたほうがうれしい。 夜中に何人もの白装束の女が鉢合わせになってみんなの呪いがオシャカになってしまうのもまた一興である。
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