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しかしながら、部屋に帰ってきたから安心という保証は微塵も無かった。
うすうす感づいていたことでもあるが今回のは本気で怖い。
僕は扇風機の風を浴びながら借りてきた本を黙々と読んでいたのだが、どうしても少し開いたトイレの隙間からの視線が気になってしょうがない。
急に寒気が僕を襲い、いつもより頑張ってくれてるのか我が扇風機なんて思ったりもしたが、その出所はそんな穏やかなものじゃないと感覚で分かった。
これまで部屋の中でも怪奇現象は度々起こっていたのだがそれほど気にも留めていなかった。
つまりはオカルトな話が好きな僕にとってそれは軽く受け流すことができるレベルだったということなのだが、今回のはそんな僕でも恐怖を感じるほどのものだ。
怪しげな若い舞妓、書架の影から見つめていた女性諸々。
兎にも角にも今日という日は特に特筆することもない、平凡な日であったはずなのに僕の『見える』人間として本格的に生活が始まった日となったのである。
まったく嬉しくはないのだが。
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