無表情の一日

4/11
前へ
/39ページ
次へ
雑談をして時間をつぶす。 娘は隅の席で絵を書いている。 暫くして何人か客が来る。 コーヒーだけ頼んで新聞を広げる老人。 モーニングセットを頼んで雑談をする主婦達。 日替わり朝定食をたのむサラリーマン。 時折、娘が書き終えた絵を見せに来る。 「てたー」 「…ありがとう」 絵を受け取り見てみる。 謎の白い何かの真ん中に黒い丸がかいてある。 「…何の絵を書いたんだ?」 「くよみじゅ」 解らなかった。 受け取った絵を引き出しにしまい、娘の頭を撫でる。 「きゃー」 作っておいたフルーツジュース(実は野菜も少しはいっている)を娘にあげる。 「…ちょっとずつな」 「んー」 小さいプラスチックのコップに少しだけ注いだジュースを3口に分けて飲む。 こうして見ると、改めて自分と娘の大きさの違いに、脆さに気づく。 もしかしたら娘にとってはこのコップも自分達にとってのコーヒーカップくらいの重さを感じているのかもしれない。 空になったコップを渡してくれる娘の手はとても小さかった。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加