ちったい氷呂さん

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シャツ一枚だった体に、用意されたジャージを身に付けながら、キラキラした表情の眞城を絶対零度の声音で切り捨てる。 「嫌だから本気で抵抗したに決まっているでしょう」 「ええー?…本当に何もしなかったんですか?伊瀬先輩は」 「あー…そうだな。そいつが、あの程度なら『何もなかった』内にはいると言い張るんなら何もなかったんじゃねえかな」 「わざとらしく何かあったとミスリードさせるような発言はやめてください」 「…で、伊瀬の鳩尾に本気の蹴りをいれて逃げ出し、シャツ一枚下に何も穿かないまま廊下に飛び出した先には運悪く通り掛かってしまった一年生がいて… 結果、保健室前の廊下に血だまりが出来た…と 戻った時は何があったのかと思ったぞ」 「不可抗力です」 「まあ、一番災難なのは寝てる隣で本番が始まるかも知れなかった宇野先生だけどな」 中々面白い話だったと、赤く染まった雑巾をゴミ箱に放り捨てて、笑う鳥居に憮然とした表情の氷呂の頭を宇野がポンポンと叩いた。
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