星に願いを

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「どこ?」と聞く間もなく、氷呂の顔が近付いて、柔らかく濡れた感触が唇の端をなぞりすぐに離れていった。 「はい、綺麗になりましたよ」 「…っ」 「っえ、よ…」 『吉野』と言いかけた言葉は、壁に押し付けられあっと言う間に飲み込まれていった。 「っひ、ろ…」 「ふ、ぁ…よひの…っん」 「氷呂…かわい…」 甘い味の舌を絡められ、深く唇を重ねられそのまま食べられてしまうような錯覚に襲われる。 背中に壁があるだけで押さえられていないのに、身動きがとれず、そのまま目を閉じて舌が絡む濡れた音と二人分の呼吸を聞きながら、ふわふわした感覚に沈みそうになっていると、いきなり吉野の体が離れ、支えが無くなった体は壁に凭れたままゆっくり床へと落ちていった。
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