星に願いを

22/34
前へ
/184ページ
次へ
「…あ」 服のボタンを止めてくれた五光の手を掴んで立ち上がると、そのまますとんとズボンがずり落ちる。 「!?」 「あれ?ベルトが抜けてますね」 「吉野ぉぉぉおおお!!」 「よーか…こわい…」 「なんなんですか。吉野を苛めないでください」 膝上まである長い丈の上着は腰の部分を絞ったデザインで、ズボンが無ければ生足ミニスカサンタ服に見えなくもない。 周囲の生徒のスーツの赤い割合が増えたのは気のせいだろう。 「氷呂、あまり同じ委員の後輩を悪く言いたくはないのですが、吉野程信用出来ない人間もいませんよ?」 「何を言ってるんですかごこーせんぱいは、吉野はかわいいですよ」 「冷静な目でよく見てください、あれは発言が可愛いだけのでかくてごつい猛犬です …氷呂、なんだか呂律が…と言うか目が据わっていませんか?」 「うー…」 「あの…髪を引っ張るのは、あの、ひ」 ちゅ。 五光の長く垂らした髪を引っ張って引き寄せた唇に軽く触れ、引き寄せられた体勢のまま硬直した五光に満足そうに頷くと、再びふらふらと歩き出した。
/184ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1021人が本棚に入れています
本棚に追加