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「…あー、伊瀬ー?」
上から聞こえてきた呆れ声に振り返り、見上げると黒のロングコート姿の伊瀬に見下ろされていた。
「『伊瀬ー』じゃねえって、なんだその寒そうな格好は」
「あついです」
「…それは雪山で遭難した人間の症状じゃねえのか?」
赤いもこもこのサンタ服とは言え、ミニスカサンタは雪の中では視覚的にも寒すぎる。
着ていたロングコートを氷呂の肩に掛けてやり、雪だらけの服の袖を払ってやると大人しくコートに腕を通したので、そのままコートのボタンを止める。
…サイズ的に、裸コートの様になってしまったのは致し方ない。
「んで、お前は何をしてたんだ」
「ゆきだるまを」
「………その丸い雪の塊はだるまなのか」
「伊瀬に差し上げます」
「だからそれはだるまじゃねえ」
「目を付けて胴体を付ければ雪だるまですよ」
「まだだるまじゃねえじゃねえか」
「ふんふんふーん」
「おい木崎」
伊瀬のコートを引き摺りながら、もう一つ雪玉を作り始めた氷呂を抱え上げ近くのベンチに座らせると、動きを止めたら寒くなったのか胴体に腕を回してぎゅうっと抱きついてきた。
「きさ」
「伊瀬、あったかいです」
「あ?」
「ぬく…」
暖を求めるようにすりすりと頬を押し付けてくる氷呂の頭を、恐る恐る撫でてやると満足そうに笑みを浮かべる。
「伊瀬ー…」
「……あ?」
隣に腰を降ろして肩を抱き、冷えた頬に軽く唇を押し付けると擽ったそうに首を竦め、少しだけ逃げた体を抱き寄せると大人しく腕の中に戻ってきた。
「…お前、なんかおかしくないか?」
「おかしくないで……っくしゅっ!」
「おい大丈夫か……木崎」
「はい?」
「寒いな、部屋、くるか?」
寒さで赤くなった頬を掌で暖めてやりながらそうたずねると、珍しく素直な返事が返ってきた。
「はい」
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