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口の中の熱で溶けそうな柔らかい果肉を咀嚼し、ゆっくりと飲み込む。
冷たくて甘い果肉が喉を流れる感触に息を吐くと、もう一切れ口元へと差し出された。
「あーん」
「あ…」
たいして食べられないと思っていた桃も、なんだかんだで用意された分はいつの間にか全て食べきってしまっていた。
「ふむ。これくらい腹にいれておけばいいか…
おいこら寝るな氷呂。薬」
食べ終わり、薬も飲まずそのまま横になろうとするのを妨害するために身体を抱き抱えるように支え、軽く背中を擦られる。
「……薬…いりません…苦いの…嫌です」
「ガキみたいな我が儘言ってんじゃねえ」
「未成年はまだ子供です…」
「屁理屈言うな」
「璃王が看病してくれましたから……飲まなくても平気です」
璃王の肩に額を押し付け、嫌々と首を振って顔を隠す。
別に、苦い薬が嫌なわけでも飲めないわけでもない。
ただ、薬を飲んでしまえば、役目を果たした璃王が帰ってしまいそうで、一人になりたくないと思ってしまったからだ。
「こら氷呂」
「や…」
「氷呂。熱が上がるだろ」
「上がりません…上がらないから…」
呆れたような溜め息に小さく肩が跳ね、わしわしと頭を撫で回されて上を向かされ、額が押し当てられる。
「ほらまた熱くなってるじゃねえか、駄々こねんな」
「う…」
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