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「先輩どうぞ」
「これは…?」
五光の前に出されたのは、ボウル一杯になみなみと注がれた半透明の褐色の液体。
ほのかに、チョコレートの香がしないでもない。
「最初、『チョコレートを湯煎で溶かす』と言うのが解らず、刻んだチョコレートに熱湯を注いだんです
棄てるのも勿体ないなあと思っていたので、先輩、どうぞ」
にっこりと天使の笑顔で微笑む悪魔が、なんの躊躇もなく水で薄めたチョコ味の飲み物を差し出す。
「…っありがとうございます!心して飲ませていただきます!」
「え」
「ホワイトデー…楽しみにしていてください」
照れたように頬を染め、恭しくチョコ水の入ったボウルを受け取ると、今にもスキップせんばかりのテンションで家庭科室から出ていった。
「ごこーせんぱい、すっごい嬉しそうだったねぇ」
「…な、なんでチョコを強要された私が罪悪感を感じないといけないんですか…っ!」
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