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「…なんだ、『それ』は」
「部屋の中にいた~」
「…氷呂は?」
「いなかった~」
「……なんなんだ『それ』は」
「なんなんだろうねぇ~」
朱雀の腕に抱えられて、すやすやと寝息をたてているのは年の頃は4歳か5歳ぐらいの小さな幼児。
一つ変わった事と言えば、幼児が身に付けているのは足元まで丈のありそうなブカブカのシャツ一枚。
具体的に言えば、氷呂が普段寝間着として着ているシャツ。
「ズボンとパンツも穿いてたんだけどぉ、持ち上げたら脱げたからそのままつれてきたぁ」
「…下着ぐらいは穿かせてやれ」
「ん…にゅ…?」
「…璃王、ハトリ。起きた」
「にゅ…」
朱雀の腕のなかで小さく身動ぎする体を軽く揺らしてあやし、四方に跳ねまくった寝癖を掌で撫でて直してやると、ぱちぱちと大きな黒い瞳が不思議そうに朱雀の顔を見上げた。
「おはよう」
「…おあよー」
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