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店の奥からバスタオルを持って戻ると、少年は扉の前でキョロキョロと店内を見回していた。
『こっち来て、身体拭きな。そのままじゃ風邪引くよ。』
ちょいちょいと手招きをしてやると、一瞬警戒したものの、素直にカウンターまで歩を進めてきた。
とりあえずバスタオルを手渡し、あたしは二階の自宅に上がって少年の変えの服を探す。
幸いな事にあたしはメンズ服が好みだったため、少年に貸す洋服はすぐに用意出来た。
BARの方へ降りると、少年は先程タオルを渡した場所から一歩も動かず、じっとカウンターの向こうにあるボトルの並んだ棚を、興味深そうに見詰めていた。
『座ってて良かったのに…これ、替えの服。お風呂沸かしたから、あったまってきな。その間に服は洗って、乾かしとくから。』
『いや…』
躊躇する少年。
あたしはそんな少年の腕を掴み、自宅の脱衣所に放り込んだ。
『つべこべ言わずにさっさと入んな。石鹸とか適当に使って良いから、じゃ。』
それだけ言って、唖然とする少年をよそにあたしはBARに戻った。
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