YOU in YOU

5/9
31人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
『あぁ、上がったんだ。来なよ、珈琲かなんか出してあげるから。』 そう言って手招きすると、多少渋々といった様子で、少年はカウンター席に腰を降ろした。 『紗矢ちゃん、この子誰なの?もしかして、彼氏君とか?』 『違う違う、雨の中ずぶ濡れで店の前に座ってたから、風呂貸してただけ。』 ママの問いに即答して、少年の事を説明する。 そういえばあたし、これだけしといて少年の名前聞いてないな…。 『ねぇ、君、名前は?』 『……。』 少年は黙ったまま。 『坊や、素直に言った方が良いわよ?じゃないと、耳の穴が左右2つずつになっちゃうから。』 ママの言葉と同時に、ビリーが少年のこめかみに拳銃を突き付ける。 『…亜久津、仁。』 流石の少年も驚いたらしく、戸惑いながら口を開いた。 『仁…良い名前。』 『あら、名前の方紗矢ちゃんに取られちゃった。じゃあ、私はあっくんって呼ぼうかしら。』 仁はあたし達の話など聞いていなかった。 『…ビリー、脅しはもう良いから。』 『おっと、すまんな。こんな新鮮な反応は久し振りだったんで、つい面白がっちまった。』 と言って、ビリーは拳銃を仕舞った。 実を言うと、あの拳銃はただのライターで、ビリーのお気に入りらしい。 『ここでは、嘘や隠し事はNGですよ、亜久津君。私も他の3人も、真実を語る者しか受け入れない。その代わり、ここでの話が外に漏れる事は一切ありません。』 『そういうこった。まぁ、よろしくな、にぃちゃん。』 仁が、会釈というよりは頷くような感じで首を縦に振る。 うん、とりあえず受け入れて貰えそうだ。 .
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!