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『はい、珈琲。ミルクも砂糖もないけど。』
仁の前に珈琲を差し出す。
…なかなか飲もうとしない。
仁の顔を覗き込み、とりあえずどうしたのかと尋ねてみた。
『今、金ない…。』
『…なんだ、そんな事か。別に良いよ。珈琲一杯で潰れる程、この店経営苦しくないし。』
それを聞いて、仁はしばらく考え込むも、最終的に『すいません』と言ってカップに口をつけた。
見かけによらず、可愛いとこあるじゃん。
『ちょっとちょっと、紗矢ちゃんばっかりズルイじゃないの。ママにも若いエキスを吸わせてよ~』
ママがあたし達の間で手をヒラヒラさせる。
若いエキスって…ママが言うと凄い怪しく聞こえる。
『ねぇねぇ、あっくんって、今いくつなの??』
『え、あぁ…15、です。』
仁の言葉に4人揃って驚いてしまった。
まさか中学生だったなんて…どう見ても高校生にしか見えない。
『うっそぉ~、あっくん中学生だったの?ママてっきり高校生かと。』
『私も驚きました。大人っぽいですね、亜久津君。』
本当、感心する。
これだけ外見がしっかりしていて、尚且つ内面もしっかりしていそうな中学生、多分そういないはず。
初めてだ…あたしが、中学生を店に入れるのは。
と言うか、未成年を店に入れる事すら初めて。
この子、何か特別な事でもあるのかな…。
『あ、あの…3人は、普段何してんだ、仕事とか。』
初めて仁が自分から口を開いた。
仕事…良い質問じゃないか。
なんせこの3人、見た目だけじゃ職業なんか想像もつかないからね。
『あら、知りたいの?じゃあ、自己紹介がてら教えてあげる。』
ママは脚を組み直し、カウンターに肘をつく。
自分の事を言う時のママは、何故か凄く妖艶で、これで堕ちた男をあたしは何十、何百と見てきた。
さて、仁はどうかな…。
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