YOU in YOU

7/9
31人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
『赤城美里(あかぎみさと)、皆は赤城さん又は美里さんって呼んでるわ。あ、たまに私の事ママって呼ぶ人もいるけど、別に本当の親子って訳じゃないから。表の職業は占い師よ、よろしくね。』 最後に投げキッスをして、ママは自己紹介を終わらせた。 仁は、とくに何も感じてないみたい。 (ふ~ん、なかなかやるね、この子。) 『じゃあ、次は私ですね。武井智士(たけいさとし)、21歳。表では一応医大生って事になってます。以後よろしく。』 あっさりした自己紹介。 初めて会った時と変わらないな。 『次はわしだな。ビリー・ローベル、今年50になる、しがない旅人だ。よろしくな、にぃちゃん。』 仁の肩に腕を回し、ニッと笑顔を向ける。 『さ、最後は紗矢ちゃんよ。』 『あ、うん…岸本紗矢(きしもとさや)、今ちょうど20歳。見ての通り、このBARの女マスター。あたし達がこうして出会ったのも何かの縁、これからよろしくね。』 自己紹介を終え、さっさと仕事に戻る。 仕事って言っても、グラスとか磨いてるだけだけど。 仕事をしながら仁の方に目をやると、彼は複雑そうな顔をしていた。 『どうかした?』 『あ、いや…最初の2人、表ではって…どういう事だ?』 今の言葉を聞き、ビリーと武井さんが仁を横目で見る。 そこで、ママが口を開いた。 『別に教えてあげても良いのよ。けどね、これを聞いたらあなた、この世界から…私達から逃げられなくなるわよ?』 ママの言葉に一瞬驚くも、すぐ平静に戻る仁。 今までは、この時点で聞くのをやめる人間しかいなかった。 (だけど、この子は恐らく…) 『面白ぇ…聞かせろよ、その、聞いたら逃げられなくなる話。』 .
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!