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『赤城美里(あかぎみさと)、皆は赤城さん又は美里さんって呼んでるわ。あ、たまに私の事ママって呼ぶ人もいるけど、別に本当の親子って訳じゃないから。表の職業は占い師よ、よろしくね。』
最後に投げキッスをして、ママは自己紹介を終わらせた。
仁は、とくに何も感じてないみたい。
(ふ~ん、なかなかやるね、この子。)
『じゃあ、次は私ですね。武井智士(たけいさとし)、21歳。表では一応医大生って事になってます。以後よろしく。』
あっさりした自己紹介。
初めて会った時と変わらないな。
『次はわしだな。ビリー・ローベル、今年50になる、しがない旅人だ。よろしくな、にぃちゃん。』
仁の肩に腕を回し、ニッと笑顔を向ける。
『さ、最後は紗矢ちゃんよ。』
『あ、うん…岸本紗矢(きしもとさや)、今ちょうど20歳。見ての通り、このBARの女マスター。あたし達がこうして出会ったのも何かの縁、これからよろしくね。』
自己紹介を終え、さっさと仕事に戻る。
仕事って言っても、グラスとか磨いてるだけだけど。
仕事をしながら仁の方に目をやると、彼は複雑そうな顔をしていた。
『どうかした?』
『あ、いや…最初の2人、表ではって…どういう事だ?』
今の言葉を聞き、ビリーと武井さんが仁を横目で見る。
そこで、ママが口を開いた。
『別に教えてあげても良いのよ。けどね、これを聞いたらあなた、この世界から…私達から逃げられなくなるわよ?』
ママの言葉に一瞬驚くも、すぐ平静に戻る仁。
今までは、この時点で聞くのをやめる人間しかいなかった。
(だけど、この子は恐らく…)
『面白ぇ…聞かせろよ、その、聞いたら逃げられなくなる話。』
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