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『あら、結構度胸あるのね。良いわ、じゃあ教えてあげる。私ね、裏の世界ではちょっと名の知れた…詐欺師なのよ。』
仁の表情が再び驚きに変わる。
『はっ、何がちょっとだ。詐欺師の女王様のくせによ。』
『そういうローベルさんこそ、かなり名の通ったプロの怪盗じゃないですか。』
ママに次いで、ビリーや武井さんも口を開く。
『人の事より先に、自分の事言ったらどうだ?親父譲りで筋金入りの闇医者さんよぉ。』
『人聞きの悪い事言わないで下さい。私は頼まれるからやってるだけですよ。』
2人の言い合いが始まる。
いつもの事だけど。
仁の方は…驚きと困惑が入り混じったような顔してる。
そりゃそうか、さっきまでおちゃらけてた人達が、いきなり詐欺師だの怪盗だの闇医者だのって言うんだもんね。
『…あんたは?』
突然話を振られた。
仁が何を言いたいかは分かってるけど、あえて『何が?』と返した。
『あんたは、3人みてぇな仕事をしてたりはしねぇのか?』
『…してない、と言ったら嘘になるかな。』
仁の質問に言葉を濁して返す。
あたしの裏の仕事なんて、そう簡単に教えられない。しかし、案の定どんな仕事かと仁に質問された。
『あたしの、仕事は…』
ついつい口ごもってしまう。
すると何故か、あたしの代わりにママが口を開いた。
『紗矢ちゃんはね、プロの殺し屋よ。』
『っ…殺し屋…!?』
仁が、今までで一番驚いた顔をした。
『もっとも、最近じゃ仕事は受けてないらしいけどね。』
『あっ…ほ、本当なのか…殺し屋って…。』
あーあ、また面倒な事に…。
ママってばどーしよーもない事ばっか言って…。
『はぁ…まったく、余計な事を…えぇ、確かにあたしは殺し屋よ。だけど今は休業中。ここ3年は仕事してないわ。』
『…あんたと常連の3人はそれぞれ秘密を持ってる、だからこそ外に情報は漏れないって事か。漏らせばそいつの命はない、聞いた人間共々、な…。』
仁が真剣な表情であたしの事を見詰める。
『ま、そういう事かな…あたしの事軽蔑した?』
YESと言われるのを承知で、あたしは仁にそう尋ねた。
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