主と吸血鬼の話 プロローグ

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「どうしてこうなった」 青年は瓦礫の山の中心でボロボロの格好と疲れた表情で呟いた。 青年の傍らには同じ年頃の少女が立っており、少女は嬉しさと困惑のない交ぜになった、何とも形容のし難い複雑な表情で青年を見つめている。 少し離れた所で立派な髭を生やした男性が今にも倒れそうな様子で瓦礫の山を見つめている。 その表情は一体何が起こったのか理解できていないといった様だった。 そんな男性の近くで、若い男性が倒れそうな男性を必死に支えている。呼び声から察するに男性の息子なのだろう。 青年はあたりを見回す。瓦礫の他には全身鎧を身に付けた兵士たちが転がっている。 彼らは気絶したり、痛みに呻いているようだが、幸いにして死人は出てないように見える。 兵士たちが山のように転がっている先には2人のメイド服を着た女性が居た。 黒髪の女性は「やっちまった」といった表情で顔を青ざめさせている。 もう1人の桃髪の女性は「やってやったよ!!」といった表情でポーズを決めてこちら視線を向けていた。 青年は空を仰ぎもう一度(1人を除いた)この場に居る人々がおそらく思っているだろうことを口にした。 「どうしてこうなった」 事の発端は一週間と少し前に遡る。
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