先生

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「先生はももさんを大学に入れてやりたい。そのやりたいこととかもちゃんと叶ってほしい。」 「そ、それは私が頑張ればいい話であって…」 「ちがうんだ!!」 「えっ?」 先生がいつもの怒鳴り方と違う、閊えていたものを放り投げたような、そんな感じで。 少しの沈黙のあとにカラスが遠くで鳴く。 今日のこの時間もそろそろ終わりだ。 「英文、解けたか?」 「あ、えっと…」 「勇敢であることとは、  何も見返りを求めず、  誰かを無条件で愛することです。    ただ与えるということには  勇気がいります。  誰もが面目を失いたくないし、  傷つきたくないのだから。」 小林先生はぽつりぽつりと回答を言った。 「あ、えっと…あの…」 「齋藤ももさん。」 「はいっ!」 「僕は君がちゃんと大学に受かるまで言わないでおこう言わないでおこうと思っていたんだけど…」
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