其の壱

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どれくらい歩いただろう。 日も傾き始め、森には夜がおずれようとしていた。 「あーくそっ!人にみつからねぇように歩いてきたら迷っちまったぜ…なんとかここから抜けださねぇとここで野宿は危ねぇな」 どうやら森を彷徨っているうちに迷ってしまったのだろう。 男は背に腹は代えられぬと元来た道を戻ろうと、踵を返すと微かだが米の炊ける匂いがしてくる事に気がつく。 そしてその匂いを見失うまいと、犬のように鼻をひくつかせ匂いを辿っていく事にした。 匂いを辿って少し歩くと、さっきまでは木々に覆われてけもの道すらなかった所から、人が一人通れるほどの歩道に出る事ができた。
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