321人が本棚に入れています
本棚に追加
「ごめんなさい!私、つまらない嫉妬してたの。私ばっかり翼さんを好きで、自信が無くて…」
翼さんは次の言葉を続けることを許してはくれなかった。
翼さんが私の唇を塞いだから。
長いキスで、私は溶けそうになる。
「そんなの、俺だって同じだよ。千晶を好きすぎて…閉じ込めておきたいくらいだ。…確かに、円山には、それらしいことを言われたよ。それは認める。でも…」
そっと翼さんは私を抱き寄せて、それからしばらく黙ってしまった。
「多分、彼女は本気よ?」
その沈黙に耐えきれずに、私がそれを破った。
だって…
昨日の彼女の目は、
上司をからかって言ったような目じゃなかった。
あの眼差しを思い出して、私は背中に回した手にグッと力が入ってしまった。
「大丈夫だよ、俺たちは何も変わらない。…夜、ちゃんと話そうな?」
コツン、とおでこを合わせて
まるで私を諭すように念を押すと、
妙に安心するから不思議だ。
コクンと頷くと、翼さんは私の髪をくしゃくしゃっと撫でて、出社した。
.
最初のコメントを投稿しよう!