発端

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 深夜に友人が訪ねてきた。  それも、意外な奴が。 「……どうしたんだこんな時間に」  リビングに招き入れて尚、無言のままテーブルの前に座る友人にそう訊きながら、冷蔵庫から麦茶を出して入れたグラスを置いた。  ついでに自分の分も入れて飲む。 「ん、仕事で近くまで来たからな。話を聞いてもらおうと思って」  答えてから、友人は麦茶に口をつけた。 「――、話?」  麦茶を飲み落としてから訊き返すと、友人は頷いて答えた。 「……襲われたんだ」  眉間に皺を寄せて友人は呟くように言った。 「襲われた……って、まさか例の通り魔にか?」 「あぁ」  友人の声に不機嫌な色が入った。  俺が言う『例の通り魔』と言うのは、ここ最近、この辺りを騒がせている暴漢のことだ。狙われているのは学生で、襲われた学生は性別関係なくボコボコに殴られている。 「襲われたのは俺の学校の生徒三人。一緒に帰る途中だったらしい。……なるべく一人で帰らないように、と注意していたのに……」
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