邂逅

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チュンチュン… 朝の日差しがカーテンの隙間から漏れ、小鳥のさえずりを目覚ましに俺は目を覚ました。 「ふぁ~…ねむ…。」 寝起きということ、そして俺本人の低血圧というのも相俟って思考が働かない。 あまり見慣れない天井に疑問符が浮かぶ。 「…ここどこだ?」 布団をめくり、上体を起こして周りを見渡す。 何もない部屋…よく言えばシンプルだろうか。ベッド、テーブル以外に目につく物がなく、唯一壁にはマイケル・ジョーダンのポスターが飾ってあるくらい。 キッチンの方を見れば冷蔵庫や洗濯機など必要最低限の家電はあるようだが居間にテレビが無いのは如何なものか。 俺の家じゃないな…。 どうにも記憶が曖昧でいまいちピンと来ない。 同じ低血圧の人なら分かってくれると思うが低血圧の人の寝起きはこんなもんなんだ。 しばらく辺りに視線をさ迷わせながら今の自分の状況について考えてみる。 …昨日は…確かスーパーで買い物をしたような…ってか買い物なんて何でしたんだろ?一人暮らしじゃあるまいし…… そこで思い至った。 あ~…一人暮らしだったか。朝起きる度にこんなんじゃ先が思いやられるな。 そう、俺は地元を離れて東京の高校に通うために一人暮らしを始める。2年生の新学期から新しい仲間と共に過ごすことになるのだ。 そりゃ、不安もあるが仕方のないこと、決まったことをうじうじ悩んでもどうしようもない。 人生必死にもがくのもいいが割りきることも同じくらい大事だと思う。
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