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「…2年の不良には、極力目を光らせておいて下さい。」
「2年?……だって貴方だって2年じゃ…。」
腑に落ちないらしい在間は、懍を見返しながら言った。
しかし、言葉を最後まで言い終わる前に、在間は息を呑んだ。
「…どういうつもりですか、龍宮先輩。」
「……ううん♪腕試し腕試し♪」
懍は龍宮の拳を手中に収め、片手で龍宮の服の襟を掴んでいる。
「……懍さん、聞いていましたか?」
「あ、はい。もちろん私も2年なんですけど、私だけだと手が回りきらないんで…。」
在間は悔しげに拳を握り締める龍宮を視界に挟み、平然と答える懍を見た。
凄いな、この子は。
あの龍宮朝来の拳を、懍は片手で受け止めていた。
豪拳の龍の異名を持つ龍宮の全力の拳を、まるで何事もなかったかのように。
「………じゃあ、条件があります。今年の1年を締めるのには、協力して下さい。いいですね?」
いくら鬼の千里眼の異名を持つ彼でも、懍の協力無しではなかなか上手くは立ち回れない。
懍は浅く頷いて、2人に背を向けた。
「……………なぁ、典雅。」
「ん?」
「俺達を、あの子は信用してんのかな…。」
「…信用してるかしてないかじゃない。お互いに干渉し過ぎず、利用され、利用する関係…。去年の始めに、そう決めたじゃないか。」
在間の冷めた返答に、龍宮は寂しげに笑う。
たしかに、その関係を望んだのはこちらで、あちらがそれを承認した。
でも。
「…………届かねぇのかな、想いってやつは…。」
龍宮の虚しい呟きは、誰にも聞かれず新学期を祝う澄んだ空に吸い込まれていった。
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