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「ウチの学校の7階にあるナイトラウンジでキスすると、恋人の仲が深まんぞー。」
爆弾発言だった。
これは学校伝説の1つで、校内でも一部の人しか知らないもの。
懍はそれを、全校生徒と全教師に暴露したのである。
再びざわめきが訪れ、今度は懍はそれが止むまで黙っていた。
「……学校ってのは、楽しむ所だ。だから、楽しく学校生活を送ってくれ。」
締めの一言には、教師が皆一様に安堵の溜め息をついたという…。
以上とだけ言って、懍は壇上を降りた。
「り…」
「御舟ぇぇっ!!」
棗が声を荒げる前に、富永が懍に掴みかかる。
緩んだネクタイを引っ張られ、懍の首は無情にも絞まっていた。
「ちょ、苦しいって!ぐっ…ケホッケホッ」
「お前、どういうつもりだっ!台本忘れただぁ?寝言は寝て言えっての!!」
一気にまくし立てられて、どこからツッコめば良いのか分からんし。
第一、台本忘れたなんて冗談に決まってるだろうが。
「た、んま…っ富丸……っ!!」
「あぁ?」
「し、ぬ…!」
「………あ、悪い。」
「っハァハァ…。」
ようやく解放された肺に目一杯の空気を吸い込んで、懍は目尻の涙を指で拭う。
「スピーチ成功だったっしょ?」
「まぁ、結果的にはね。」
「でも、途中はハラハラしたぞ。」
拓海と棗の言葉に、うんうんと頷く富永。
「あぁ…。あれは、ごめん。」
潔く謝る懍に、3人は何も言えなくなる。
だってあのスピーチがなけりゃ、新入生の注目が壇上に向いた事なんてなかったてのは、紛れもない事実だから。
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