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村上は狼狽えた様に後退する。
気圧された。
その言葉が、一番よく合っている。
「た、たとえば…っ附属上がりだからって、先生とタメ口で話すとか…っ」
「とか?」
「しょ、初対面なのに礼儀が悪いとか…っ」
「とか?」
「と、とにかくっ!態度が大きいんです!」
「へぇ?附属上がりにただ漠然と向かってくるあんたも、よっぽど態度でかいと思うけどね?」
懍は村上の目をしっかりと見据えた。
中等部の頃からある程度そっちの奴等の中で名前の知れた奴だった。
だから、不良を一斉に殴り倒した武勇伝があったりするのだ。
「……なんてな。よし、後半グループも校内見学行くぞ。」
おどけた調子で笑って見せ、懍は廊下に出る。
附属上がりは懍の周りに群がり、始業式の帰りにカラオケに行く話題で盛り上がりを見せていた。
「……あ、あの御舟さんっ!」
「ん?」
「さっきの…、村上君が、来てないです…。」
外部生の女子生徒が、体育館の鍵を開けている懍に話し掛けた。
懍は面倒そうに頭を描き、深く溜め息をつく。
「教室?」
「は、はいっ」
「…ありがとう(ニコッ)」
懍が笑うと、その女子生徒は顔を赤く染めた。
懍は附属上がりに案内を任せて、先輩達の間を駆け足で1年の教室に戻っていく。
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