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懍は息を切らしながら駅の階段を駆け上っていく。
首もとに光るネックレスが揺れる。
駅構内に流れるアナウンスが電車の発車を伝えてくれた。
懍は一番近かったドアに飛び込んだ。
「ハア…ハア……ッ」
少し落ち着こうと、まだ弾む胸に手を当てる。
不規則な鼓動がだんだんと治まっていく。
「ハア………ハア……。」
落ち着いてから、改めて顔を上げた。
次の駅からは友達が乗ってくる筈で、懍は胸元のネックレスをブラウスの中に仕舞う。
駅への到着を知らせるアナウンスが聞こえ、ドアが開いた。
「……おは。寝坊しなかったみたいだね、懍。」
「開口一番に言ってくれるな。」
「ま、いいんじゃね?どうせギリギリだったべ?」
「お前ら…っ」
晝間 拓海(ヒルマ タクミ)
基本的に温厚な奴で、いつもニコニコしてる。
私とつるむにしては、随分ときっちりした格好をしたメガネ君だ。
河越 棗(カワゴエ ナツメ)
拓海とは対照の奴。
ブラウスの下に赤いシャツを来て、ネクタイはしていない。
顔は良いのに、遊ぶ以外で女に興味がないのが玉に傷だ。
この2人と私は、幼稚園から一緒の幼馴染みだったりする。
「あれ…?懍、スピーチの原稿はいいの?」
「それがあったから早く来たんだよ。ったく、スピーチぐらい学校で用意しろよな…。」
そう言いながら、懍はスクバをあさりだした。
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