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「お前なぁ…。学年トップがそんな事言っちゃいけねぇんじゃねぇの?」
「学年トップとかこの際どうでもいいから、スピーチ代わってくんないかな…。」
「無理だよ、そんなの。」
「だよなぁ…。」
懍はクリアファイルを取り出して、原稿を見る。
こんなにチャラくて、こんなに不良じみた懍が学年トップというのは、些か信じがたくて、どうなのかと思うが、懍は附属の中学校に通っていた頃から、群を抜いて成績が良かったのだ。
「……てかさ、原稿通りに読める訳ないじゃん?だから、アドリブでどうよ?」
「ダメだろ。」
「懍のアドリブじゃ、1年生が引いちゃうよ?」
「お前ら…どういう意味だ?」
「お前がチャラくて」
「1年生がびっくりするって事だよ。」
知ってる。
自分の格好がチャラくて、どれだけ印象が悪いかって事ぐらい。
でも、それを悪いと感じた事はないし、直すつもりなんてさらさらない。
「………。」
「……気にする事ねぇんじゃね?お前らしいし、それに…。」
「懍のチャラさは、訳のあるチャラさだからね。」
拓海も棗も、馬鹿みたいな私を支えてくれる大切な友達。
昔から一緒にいるからこそ、分かってくれる事もある。
「別に気にはしてないけど…。原稿、覚えらんないわ……。」
この言葉が照れ隠しだって事も、きっと2人は気付いてる。
チャラさを隠す気も、直す気もない。
だって受け止めてくれる2人がいるから。
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