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懍はあの教師が嫌いだった。
何が嫌いかと問われれば即行で全てだと答えられる程、大嫌いだ。
まず第一に、教師のくせに教師より生徒に近い所がウザい。
生徒と一線を引いて付き合える教師の方が、干渉されずに済むのに。
それでも結局は普通の大人とおんなじで、私みたいな生徒を認めようとなんてしない。
まぁ、別に認めて欲しい訳じゃないんだけど。
「あ、御舟先輩!おはようございます!!」
「よぅ。」
「…やべぇ。挨拶しちゃったよ…っ」
挨拶するのにすれ違った男子生徒が、一緒にいた友達に嬉しそうに話す声が聞こえる。
少し耳を澄ませば、そんな声は至るところから聞こえてきて、懍は溜め息をついた。
「…若いくせに、なに溜め息なんてついてんですか。」
「………はよ、松本。」
「おはようございます、懍さん。」
松本 恭平(マツモト キョウヘイ)
今年から高校1年で、附属の中学にいた頃から懍とつるむ唯一の後輩。
誰よりもチャラいと自負しているが、実は懍にだけは敵わないと思っている。
「どうしました?河越先輩とクラスが別れたのが、そんなにショックでしたか?」
「あ~、うん。そう、棗と離れちゃってさみしーなー。」
めんどくさそうに言う懍に、松本は苦笑した。
本人は気付いてないだろうけど、機嫌の悪さの原因はそこじゃないかなー…。
「……あ、あのっ」
「「ん?」」
いきなり聞こえた高めの声に、懍と松本は同時に振り向いた。
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