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――2:44 PM――
ドアをノックする音が聞こえる。きっと凛だ。来るのがあまりにも早くて、少し驚いた俺。
「は~い」
「やっほ」
やっぱり凛だった。3時くらいとか言っておきながら、結構早いな。俺と一緒に買い物へ行くのが、そんなに楽しみにしてくれていたんだな。そう思っておこう。
「もう行くのか?」
「うん! 水着じゃなくて服にするよ。水着は結構持ってるからね」
まさか本当に未来が変わるんじゃ……。この様子じゃ、凛が靴を買うようには思えない。急に「やっぱり靴買う!」とか言い出しそうにも思えない。
「ほら、早く準備して行くよ!」
「あぁ」
――2:50 PM――
階段を下りていると、山田が缶コーヒーを片手に上ってきた。彼女は俺達に気付くと、凛をじっと見つめる。よく俺の部屋に来る凛を、隣に住んでいる山田は知らないようだ。
「えっと……もしかして君の彼女なの?」
「あぁ、そうだ」
「違うでしょ……!」
そこまで恥ずかしがる事か? 凛はいつまで意地を張るつもりなんだろうな。
「そうなんだ~。君も隅に置けないね~!」
その後俺は、凛に山田を、山田を凛に紹介した。それから俺達は、自転車に乗り駅へ向かう。
水溜まりがまだ乾ききっておらず、太陽の光を受けてキラキラと輝いている。積乱雲が遥か遠くで漂っている。雨のせいで鳴けなかった蝉は、昨日の分を取り戻すかのように、より一層うるさく鳴いている。やっぱり俺は、冬の方が好きだ。冬になったら逆の事を言ってるんだろうけど。
――3:26 PM――
ズラリと自転車が並んでいる駐輪場に止め、箱のような形をした切符売り場で切符を買う。
ベンチに座り、電車が来るのを待つ。凛は隣に座ると、ウエストポーチから小さな鏡を出して、髪をいじる。
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