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凛は楽しそうにしているが、やはり彼氏としては止めておくように、進言すべきなのだろうか。もし、とんでもない姿になっていたりしたら……。
「裕也、ここで撮るのか?」
「……おぅ」
「あたし達、カップルじゃないんだけど……」
俺は凛を玄関の前へ連れていき、彼女の腰に手を回し抱き寄せる。
「はぁ!? もしかしなくても、頭おかしいんじゃない!?」
「まぁまぁ、実は嬉しいくせにさ」
「む~~~~!」
凛は口を尖らせ、俺を見上げる。いちいち可愛いなおい。心の底から嫌がっていない限り、離すつもりなんてないし。
「は~い、凛は笑ってね~」
俺は満面の笑みでピースサイン。笑顔認証をしたら、100%になるのは間違いないだろう。凛は口元をひきつらせながら、小さく胸の前でピース。
「翔馬、彩度0にしてから撮ってくれ」
「先にやっとけよ……」
ぶつぶつと文句を言いながらも、翔馬は馴れた手付きで設定を変える。
「凛、もっと笑えよ」
「だって~!」
こんなんじゃ、いつまで経っても撮れないな。
「翔馬、いつでもいいから撮るんだ!」
「はいよ~」
そう言い、翔馬は写真を撮ってしまう。いい加減すぎるだろ。まずは彩度を<±0>にして撮っている。もちろん何の変化もない。
「どうだった?」
「普通だよ。じゃあ設定変えるぞ」
あっという間に設定を変えると、また適当に撮る。ビシッと決めてから撮ってほしかったんだが……。
「翔馬くん、せめてもう少し――」
凛は言いかけて口を閉ざす。翔馬の顔が青ざめている事に気付いたからだ。彼の手は小刻みに、けれど大きく震えている。
「何でなんだよ!」
「翔馬、どうかしたのか?」
翔馬は何度も「何で……?」と繰り返し呟くだけ。気になった俺達は、カメラの画面を覗き見る。そこには、たった今撮ったばかりの写真が表示されている。だが、1つおかしな事が起こっている。
「凛が、消えてる……?」
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