第6章 カワルミライ

5/13
前へ
/104ページ
次へ
凛は楽しそうにしているが、やはり彼氏としては止めておくように、進言すべきなのだろうか。もし、とんでもない姿になっていたりしたら……。 「裕也、ここで撮るのか?」 「……おぅ」 「あたし達、カップルじゃないんだけど……」 俺は凛を玄関の前へ連れていき、彼女の腰に手を回し抱き寄せる。 「はぁ!? もしかしなくても、頭おかしいんじゃない!?」 「まぁまぁ、実は嬉しいくせにさ」 「む~~~~!」 凛は口を尖らせ、俺を見上げる。いちいち可愛いなおい。心の底から嫌がっていない限り、離すつもりなんてないし。 「は~い、凛は笑ってね~」 俺は満面の笑みでピースサイン。笑顔認証をしたら、100%になるのは間違いないだろう。凛は口元をひきつらせながら、小さく胸の前でピース。 「翔馬、彩度0にしてから撮ってくれ」 「先にやっとけよ……」 ぶつぶつと文句を言いながらも、翔馬は馴れた手付きで設定を変える。 「凛、もっと笑えよ」 「だって~!」 こんなんじゃ、いつまで経っても撮れないな。 「翔馬、いつでもいいから撮るんだ!」 「はいよ~」 そう言い、翔馬は写真を撮ってしまう。いい加減すぎるだろ。まずは彩度を<±0>にして撮っている。もちろん何の変化もない。 「どうだった?」 「普通だよ。じゃあ設定変えるぞ」 あっという間に設定を変えると、また適当に撮る。ビシッと決めてから撮ってほしかったんだが……。 「翔馬くん、せめてもう少し――」 凛は言いかけて口を閉ざす。翔馬の顔が青ざめている事に気付いたからだ。彼の手は小刻みに、けれど大きく震えている。 「何でなんだよ!」 「翔馬、どうかしたのか?」 翔馬は何度も「何で……?」と繰り返し呟くだけ。気になった俺達は、カメラの画面を覗き見る。そこには、たった今撮ったばかりの写真が表示されている。だが、1つおかしな事が起こっている。 「凛が、消えてる……?」
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!

63人が本棚に入れています
本棚に追加