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「なんであたしだけ消えてるの? 裕也くんはそのままなのに」
写真には、俺1人しか写っていなかった。凛<だけ>が消えたのだ。俺と凛は頭の上に<?>が浮かんでいるだけだが、翔馬の様子がどうもおかしい。驚いているように見えるし、焦っているようにも見える。
俺の隣には凛が立っていたはず。だがそこには誰も立っていない。まるで凛が透明人間にでもなったような画だ。俺は壁に向かって話しかけている。第3者が見れば、頭の痛い青年にしか見えないのだろう。
「何で……!?」
「翔馬、落ち着け。変なのが写るのは、お前だって知ってるだろ? これは普通のカメラじゃないんだから、そこまで驚かなくてもいいんじゃないか?」
俺は岩のように固まった翔馬の肩を掴む。彼はかなりの汗をかいている。凛はポーチから淡いピンク色のハンカチを出して、彼の汗を拭く。
「こんな写真を見て、落ち着いていられるかよ! 人が消えてるんだぞ!? しかも凛が!」
いつもの飄々とした翔馬の姿が、そこにはない。続けて言う。
「お前はちゃんと写ってるんだ! どうして凛だけが消えてるんだ!?」
この写真での一番の引っかかりはそこだ。なぜ、俺が写って凛が消えたのか。
「俺が72時間後に、そこでそんな事してるんだろうよ」
「そうだよ。翔馬くんは気にしすぎなんだよ」
「……だったらいいんだけどな」
頭に血が上っていた翔馬は、ようやく落ち着きを取り戻していった。俺は今の言葉に違和感を覚えた。言葉では表現しづらいが、何か重要なヒントだと思ってならなかった。
気にしすぎ……。この時の俺はまだ、その一言で片付けていたんだ。あの写真が、何を写し出していたのかに気付くまでは……。
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