63人が本棚に入れています
本棚に追加
――8/5(金) 9:13 AM――
安らかな俺の安眠を妨げたのは、翔馬からの電話だった。最近、彼から電話がよくかかってきているような気がする。
「モーニングコール、ご苦労様です」
『アホか。……1つお前に頼みがあるんだが、構わないか?』
翔馬の声は沈んでいる。ふざけて相手をしてもいい様子ではない。
『しばらく、凛の傍にいてやってくれないか?』
翔馬は昨日の写真の件について、まだ気にしているようだ。俺もなぜ凛だけが消えたのか、ずっと気になっている。彼女の身に何かが起こるのだろうか。例えば、どこか怪我をしてしまったり……。
「だからさ、勘違いだって。気にしすぎだよ」
俺は昨日から『気にしすぎ』と何度も言い聞かせている。最悪の事態を考えたくないからな。
『何か起こってからじゃ遅いんだぞ! 頼む!』
翔馬が頭を下げているのが、電話越しでもひしひしと伝わってきた。なぜ彼が、そこまであの写真に執着しているのか、今の俺には理解できなかった。
結局俺は、根気負けした。翔馬は外せない用事があるらしく、今日は俺達とは会えないらしい。通話を切り凛に遊べないかとメールを送る。すぐに返信が返ってきた。構わないとの事だ。
――11:36 AM――
凛がやって来る。彼女に翔馬が昨日の事でかなり心配していると伝える。
「やっぱり、翔馬くんは優しいな」
「俺は?」
「いきなり呼ばれてもさ、する事無いよね?」
「だから、俺は?」
「そうやって、無理矢理聞き出そうとするのは、あんまりよくないと思うよ。……今のはあたしの独り言だから気にしないでね?」
俺の透明で濁りの無いハートに、ヒビが入ったような気がした。なるほど、凛は俺をそう思っていたのか……。
「でも、裕也くんは好きだよ」
「それってどういう意味で……」
今のって告白なのか? いやいや、そんなはずはない。俺達は付き合ってるんだからな。そう、今のは<瀬川裕也>という1人の男が好きという意味じゃなくて、古くからの彼氏として好きという意味だ。俺、照れてんじゃねぇよ!
最初のコメントを投稿しよう!