第6章 カワルミライ

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俺達は長椅子に座り、『手術中』のランプが消えるのをじっと待っていた。俺も翔馬も、指を組んで凛の無事を祈っていた。 途中、翔馬は1階へ下り缶コーヒーを買ってきてくれた。味なんかほとんど分からなかった。 お互い全く口を開かなかった。開けなかったのかもしれない。喋る気すら、全く無かったから。 あの時俺が凛を帰していなかったら……。一緒に帰っていれば……。繰り返す自問自答。俺は凛を1人で帰してしまった事を、酷く責める。 ――10:23 PM―― ランプが消えると、扉が開く。俺達はすぐに立ち上がる。凛の無事を祈りながら。 手術室から1人の医者が現れる。小太りの中年男性だ。彼は申し訳なさそうに、俺達を見る。 「お友達ですね?」 「はい」 俺はそう言ったつもりだったが、声が出なかった。 「全力を尽くしましたが、傷が酷くまだ意識が戻っていません……」 そこから先は何も言わなかった。だが、俺達はもう分かっている。 「ありがとう、ございました……」 翔馬は静かに頭を下げる。俺はいきなり突きつけられた現実を信じたくなくて、認めたくなくて、長椅子に座り込んで膝を抱える。 「俺が、全部悪いんだ……」 だから、凛を殺してしまったのは俺なんだ。1人で帰していなければ、彼女は事故に巻き込まれずに済んだはずなんだ。 カラカラとキャスターが滑る音が聞こえる。その方を見ると、扉から1台の大きなベッドを、3人のナースが押してきている。俺は傍まで駆け寄るが、止めようとはしない。彼女には呼吸器が付けられていて、頭を包帯でぐるぐる巻いている。 「凛、俺だ! 聞こえるか!?」 俺はベッドと並走しながら、何度も何度も呼びかける。だが、反応は無い。 「裕也、今の俺達は何もできない」 翔馬が俺の肩を掴む。凛を乗せたベッドはどんどん離れていく。
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