63人が本棚に入れています
本棚に追加
「風が気持ちいいな」
「そうですね~」
大好きな彼氏と2人乗りなうだって言うのに、凛は口を尖らせて拗ねている。そう振る舞っているんだと思っておこう。
「前見て漕ぎなさいよ」
「すまんな、ついつい可愛い凛の顔を見つめちゃったよ」
「そ、そうなんだ……」
凛は俯き俺のシャツの裾を小さくつまむ。なんて可愛い仕草をするんだ!
「どこか行きたい場所とかあるか?」
こうして風に当たりながら、彼女と2人乗り。誰がどう見ても、俺達はカップルにしか見えない。
「う~ん、しばらくこのままでいいかも」
「俺とくっつきたいのか?」
「……そんなんじゃないわよ」
振り向いて凛の顔を見てみたい。
「河原に沿って走ってみるか」
それから昼飯をどこかで食べて、昼からもそこら辺をうろついて……。とにかく、凛を1人にさせなければいい。今日1日は、凛と一緒にいてやらないとな。
「なぁ、今日の夜って用事でもあるのか?」
「ん? えっと~、分かんないや」
「そっか……。今日はずっと凛の傍にいるからな」
「……はぁ!?」
おっと、つい心の声が。いやいや、結果オーライだ。きっと嬉しそうな顔をしているはずだ。そう思っておこう。
「さて、そろそろ飯にするか」
引き返し、俺は小さな喫茶店を目指す。
この間当てた4等の1万円――大分前のように感じるが――で昼食を食べた俺達。その後は商店街のゲーセンに寄りイチャイチャ。プリクラ撮ったしね。もちろん、俺の肩に凛を抱き寄せて。彼女が俯いてしまって、いいのを撮れなかったのが心残りだけど。
――3:25 PM――
「何で俯いたんだ?」
「だ、だって……いきなりだったし……」
「長い付き合いなんだから、それくらい普通だろ」
「……うん」
元気無いな。無理に連れ回し過ぎたかもな。公園かどこかで休むか。
――5:03 PM――
緑に囲まれた自然が溢れる近所の公園にやって来た。公園とは言っても、植樹された草木ばかりで、滑り台やブランコ等は一切無い。あるのは自然とベンチだけ。
俺の体力は、グレートジャーニーを人力だけで横断したかのような疲労が溜まっていた。いくらスタイル抜群の凛を後ろに乗せていても、2人乗りはやはり疲れる。
最初のコメントを投稿しよう!