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「裕也くん、体力無さすぎ」
「彼氏なのに、みっともない姿を晒しちまったな」
「昔からその姿何度も見てるし。ジュースでも買って来ようか?」
凛は立ち上がると、お尻についた細かい砂利を払う。彼女にジュースを奢ってもらうなんて、カッコ悪いマネはしない。
「いいよ。凛は座って待ってな。えっと、お茶でいいよな?」
「お願いしま~す」
なるべく凛は動かさない方がいい。いつ事故に遭ってもおかしくないからだ。どちらも同じ場所で起こったと仮定した場合、その付近に近付けなければいい。
とは言え、そこがどこか俺には分からない。午前の段階では、凛は夜に出かける予定は無い。おそらく、気紛れで家を出た矢先の出来事だったのだろう。前回も前々回も、翔馬から電話がかかってきたのは、9時過ぎ。彼に連絡が届くまで多少の時間がかかるはずだから、7時から8時の間で起こったのだろう。
それまで、あと2時間弱ある。
俺達が今いる公園の周りには、大きな国道が走っている。自販機はここから国道へ渡った所にある。たくさんの自動車が行き交っている。
「まさかここで……」
考えすぎだな。ここは凛の家から結構離れている。わざわざこんな所までやってくる用事は、彼女には無いように思える。
俺はコーラとお茶を買い、ベンチに座って携帯をいじっている凛の目の前にお茶をつきだす。
「ありがとね」
「礼には及ばねぇよ」
コーラのキャップを開けようとした瞬間、ポケットに突っ込んであった携帯が鳴り響く。雰囲気が一気にぶち壊された。
「……翔馬だ」
「翔馬くんからっ!?」
なぜそれほど嬉しそうにするのだろう。
「何だ?」
『今どこにいる?』
「愛しの彼女と、夜の公園で2人きりだ。来なくてもいいからな~」
『愛の巣をぶち壊すようなバカな事はしないから、安心しろ。じゃあな』
翔馬は通話を切る。
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