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「良いんだけど。あいつもいないし、帰る」
「え?しかしまだ挨拶が……」
「挨拶って何?私はあいつに呼ばれて遊びに来たの。婚約者として来たわけじゃないわ」
……ああ、生粋のお嬢様だ。
強くて、俺がまるで刃向かえない雰囲気。
「分かりました。お車に戻りましょう」
屋敷に戻ったのが深夜1時過ぎ。
それから明日の準備を少ししてアパートに戻ったのは2時前。
「やっぱりいないか」
当たり前だけど、美波がいないことに少しだけ落胆する。
気持ちを切り替え、美波にメールを送り眠りについた。
そのメールの返事が美波から来なかったことは、さほど気にしなかった。
次の日も普通に仕事をして、というわけにもいかないらしい。
那弓様の仕事場まで車で送るのが朝の日課。
しかし、今日は会社の前に婚約者(仮)が立っている。
「那弓様。ケンカはなさらないでくださいね」
「そんなの向こうの出方しだいよ。ほら、扉開けて」
「……かしこまりました」
ケンカする気満々だな。
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