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周りは結構泣いてた。
女子は特にな。
この中学卒業生は、ここら近辺にある高校か、電車に揺られて20分くらいの超名門校に行くかで分かれる。
大抵は名門校を本命に電車に揺られて10分くらいの公立を次くらいに・・・・・・ってのが多い。
俺は学力に関しては名門校でも中くらいの順位だと言われたが、俺にはがり勉共に囲まれて勉強する趣味はない。
近辺の高校を本命にして、試験を受けた。
見事合格。
試験順位も上位だったらしい。
そんな事を考えてる内に、学校の校庭に散らばる学生達の親が集まり始めた。
ビュンビュン吹く風は砂を含めている。
俺には親友と呼べる程仲が特別良い奴なんていない。
同じクラスにならなきゃ、友達関係なんか続行されない薄っぺらい関係だ。
今回は数人同じ学校だが、2人くらいだ、クラスはバラけるだろう。
だからまた一人になるのだ。
「あー、さみー、帰ろ」
砂埃が舞う校庭を後にして、校門を出る。
振り返ると、今まで通っていた中学校が、何か他人みたいな気がした。
行きなり関係が切れたような感覚。
もう俺には関係無いって事か・・・・・・。
ズボンに手を突っ込み、帰路につく。
家に帰れば暖かい空気が漂い。
妹が迎えて、母さんが笑う。
春休みは沢山遊んで、沢山食って、沢山寝る。
そうすれば最高だ。
早々に春休み予想図を考案し、三つの休みの内、1番短い休みをどう遊び尽くすか、そう考えていた。
近くのデパートでも、家族と行けば楽しい。
何の変哲もない場所でも、笑顔があれば楽しいだろうな。
さてと、思春期も同時に卒業してくれたなー、なんて叶う筈もない夢を思いながら家の扉を開く。
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダと、奥のリビングが誰かが駆けてくる音が聞こえてくる。
フローリングは実に響く。
なんど俺の命を救ったのだろうか。
ああ、片手の指が折れないくらいだろうなー。
「お兄ちゃぁぁぁぁん!!大変だよぉぉぉぉ!!」
駆けて来た人物、俺の妹だ。
アントニオの再来、榊原 叶恵(さかきばら かなえ)という、アントニオの再来とは、まあすぐに分かる。
俺の妹、叶恵は大変だよぉと言ってる割には笑顔で俺に向かってジャンプする。
俺に抱き着く様に来るのではなく、なぜか俺に足を向けて。
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