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定刻を過ぎたオフィス。
そこに一人残る斎の姿がある。
「あれ?
斎係長まだいたんですか?」
忘れ物を取りに戻った若槻は斎に声をかけた。
「お?
梓。
どうした?」
若槻の存在に気づいた斎はパソコンから目を離し、若槻を見た。
「忘れ物取りに来たんです」
そう言って若槻は自分のディスクからUSBをとった。
「そっか」
若槻の行動を確認すると、斎は再びパソコンに向かった。
「これ企画書?
全部消えたんじゃなかったんですか?」
若槻はパソコンを覗き込み驚いた。
「実はね、何処かに保存されてないかなと思って見てたらあったんだよ。
しかも先方から新しい企画案もらってね。
少し作り直し中。
ちょうどよかったよ」
若槻の顔を見て斎はニッと笑った。
「さすがピンチをチャンスにする男ですね」
斎の前向きさに若槻は感心している。
「まぁな」
若槻の言葉に斎は照れている。
「家でやればいいんじゃないですか?」
わざわざ残ってまでやる斎に若槻は疑問を抱いていた。
「いやいや。
ウチ、ほら妹うるさいでしょ?」
冗談っぽく斎は言う。
「そんな言い方したら由美(ゆみ)に怒られますよ」
真面目に答えてくれない斎に若槻は少しムッとした。
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