お題:『実り』

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「あたし断るつもりでいたから……。 てか、展開早すぎて断りそびれたの」 苦笑いして若槻は言う。 「へ? 梓まさか好きな人が……」 若槻の言葉でクールダウンした斎はそっと携帯電話をしまった。 「いるよ」 真っすぐに見つめたまま若槻は答える。 「やっぱり。 小さいころさ、『雅にぃと結婚はいや。 だってあたし斎梓になる。 名前が二文字になるから』って振られたからな~」 そう言って斎は頭をかいた。 「そんな事言った?」 若槻は首を傾げる。 「言ったよ」 コクリと頷き斎は答える。 「あたしの好きな人は今目の前にいる雅樹だよ」 顔を赤らめ若槻は言う。 「へーへーそうですか。 って、俺?!」 フラれたとばかり思っていた斎は驚き立ち上がった。 「そうだよ。 あたし雅樹の事が好き。 大好き」 大胆にも若槻は斎に抱きついた。 「可愛い妹と思って自分を制御していた俺って一体……」 抱きつく若槻を見ながら斎は頭をかいた。 「今フツーに告白してきたクセに」 そう言って若槻は悪戯っぽく笑う。 「あう」 斎は顔を手で押さえ面目なさそうにしてる。 「あたしちゃんと井上くんに断るから」 斎を真っすぐにみて若槻は言う。 若槻の気持ちはきちんとしていた。 「おう。 これでやっと俺の恋も実ったってワケか」 大きく繊細な手で斎は若槻の頭を撫でた。 「あたしの恋もね」 斎の胸に顔を当てながら若槻は言う。
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