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そんな、ある日の事だった。
「……おじいちゃん…」
病室に現れた源一郎は、誌乃の憔悴しきった様子に、思わずその表情を歪めていた。
自分も長い事、産婦人科医師として酷いつわりに苦しむ患者を沢山診て来たけれど…、
可愛い孫娘のこんな姿は、やはり可哀想で堪らない。
代わってやりたいと心底思う。
「……辛いだろう…」
そう言って頭を撫でられ、誌乃は少しだけ口角を上げた。
「……後…、少しだもん…」
そうだな、と源一郎は頷くと、ポケットの中から何かを取り出し、誌乃の手に握らせた。
ゆっくりと手を広げてみると、それは…、
見た事のある、安産の御守りだった。
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