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「 ね、お父さん…、私、退院しようかな…」
急にそんな事を言った誌乃に、昇悟は驚いた顔を向けた。
時期的には、まだ安心できる訳じゃないけれど、以前の状態に比べたら確かに随分落ち着いている。
もう…、自分の中で区切りがついたのだろうか。
過去の哀しい出来事に。
このボーダーラインを、無事に越えようとしている事で。
「……君が大丈夫なら、構わないよ。寂しいけどな 」
昇悟にとって、誌乃の様子を毎日頻繁に見に来る事は、医師としても安心だったし、父親としての喜びでもあったから。
「 お父さん…、ありがと…」
そう言うと、誌乃は昇悟の手をそっと握った。
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