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ずっと、…自分は望まれなかった子供なんだと思ってた。
父親は仕方なく自分を引き取り、この人は…、金の為に、或いは邪魔だから、自分を田島の家に売り渡したんだと。
義母にそう刷り込まれて来たし、忙しい父親と話す機会も、むしろ話そうともしなかった。
この人が母親だと分かっても、真実を聞くのがどこかで怖くて…、避けていたのかも知れない。
だけど…、
結婚式で事実を知った時から、過去は水に流し、誌乃との幸せな未来だけを考えて生きていくと決めている。
「……裏の屋敷の離れに…、じいさんとふたりで住んでくれたら…、それでいい……」
その幸せな未来図の中には、既に…、この人も存在しているのだから。
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