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そんなやり取りがあった事を、誌乃は、少し涙ぐんだ芳江から聞いた。
芳江は誌乃の手を取り、何度も何度も、ありがとう、と言った。
「……慎一を手放したくせに、あの子に辛い思いをさせたくせに、私は…、こんなに幸せでいいのかしら…」
そう言った芳江の手を、誌乃は、ぎゅ、と握り返す。
「 お義母さんも、いっぱい辛い思いをして、いっぱい頑張ったんだもん 」
だからきっとご褒美が貰えたんです、と言った誌乃の言葉に、芳江はまた涙ぐむ。
そんな様子を、ドアの外でこっそりと聞いていた源一郎に気付き、誌乃はクスッと笑った。
「 おじいちゃん、お義母さんをもっと幸せにしてあげてね?」
源一郎は、チラッとドアから顔を覗かせ、わかっとる、と照れたように笑った。
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