( 付録 ) 慎一の憂鬱

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昇悟にとって、陽子は恩人だ。 都を看取り、誌乃を引き取り、都の後を追おうとした昇悟の命を救った恩人。 何も知らなかったばかりに、何の恩も返せず、礼すら言えなかった事が、今も悔やまれて仕方ない。 様々な事を思い出した昇悟は、少し目の奥がじわりとするのを感じ、それを誤魔化すかのように慌てて結希を抱き上げた。 そんな昇悟を見て…、誌乃の目にも涙が滲む。 幼い自分を、知らなかったとしても抱いてくれていたんだと思うと、嬉しくて堪らなかった。 そして、そんな機会を与えてくれた育ての母 陽子にも、感謝の気持ちで一杯だ。 きっと…、今の自分達の幸せな姿を、遠い空の向こうで喜んでくれてると思う。 都と一緒に。
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