10082人が本棚に入れています
本棚に追加
慎一は何も言わず、誌乃を抱き寄せた。
そしてその髪を優しく撫でると、誌乃はまた、テヘ、と照れ臭そうに笑う。
あの日の事は、慎一も啓輔も忘れてなどいない。
もう二度と…、あんな辛い思いはしたくないし、させたくはない。
啓輔は穏やかに笑いながら、
「 さ、そろそろ時間ですよ 」
と促した。
「 じゃ、行って来る 」
と慎一が誌乃の腰に手を回し、
「 行ってきます 」
と誌乃は手を振った。
気を付けて、と小さく手を上げて応えた後、浮き足立って歩いていくふたりの後ろ姿を見送って…、
啓輔は、クスッと笑った。
「 お楽しみはこれからです。良い旅を 」
最初のコメントを投稿しよう!