《四章 上巻》

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──── ────── ──────── 月明かりが照らす屋根の上を、軽快に走っては跳び移る黒い物体。 どんなに高く飛び上がっても、着地は音一つない。聴こえるのは風を切る微かな音。 ある宿が見える場所で、ピタリと動きは止まる。灯りがついていて、ほんの少し開いた戸から光が漏れている。 ここからでは宿内がどうなっているのかわからない。 弱々しく漏れる光を見ながら、宿の周りに誰もいないか確認する。灯りがついているのはその部屋だけ。 その部屋以外は、寝静まっていて動きも光もない。 誰もいないことが分かったら、すばやくその宿の屋根の上に跳び移る。膝をついて集中する。
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